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村田沙耶香『コンビニ人間』

村田沙耶香コンビニ人間』はとても面白い

第155回芥川賞受賞作。

今更ながらの感がありますが、とても面白い作品なので紹介しますね。

作者村田沙耶香さん。別名クレイジー沙耶香。


1979年8月14日千葉県生まれ。玉川大学文学部卒。

写真掲載していいかわからないので、私の感想ですが、おっとり癒し系にお見かけします。

しかし、朝井リョウさんや、西加奈子さんたち作家さんがそう呼ぶそうです。

(愛をこめて、、多分)

 BSジャパンで放送された番組『ご本、出しときますね?』をまとめた本

文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね?』BSジャパン/若林正恭ポプラ社

の中で、村田沙耶香さんとオードリー若林さんが対談しています。

クレイジーぶりが読めますよ。

Q喜怒哀楽のうち、どの感情が仕事のモチベーションになりますか?

村田 「喜び」かな?

村田 殺人シーンを書くことができて、喜びを感じました。

若林 怖っ!単純に、怖い!

村田 「ここをこう刺したらこんなに血がいっぱい出る」とか、人体のこと調べたりして・・・作家は小説の中でしか体験できない場面を描いて、その中でしか出会えない言葉を探すことができるので、それはすごい喜びだと思います。

また、こんなやり取りもあります。

村田 人間という動物そのものに興味があるんです。私、動物番組が好きなんですけど、あれで人間をやってほしい。「今日は人間です」

若林 どういう映像が見たいんですか?

村田 なんだろう、交尾とか。

若林 放送できねえよ!

 とても真面目で、とてもクレイジー

コンビニ人間』あらすじ

 主人公 石倉恵子36歳独身

子供時代

  • 少し奇妙がられる子。
  • 他の子は死んでいる小鳥を見てかわいそうにと泣いているのに、恵子は「お父さんが焼き鳥が好きだから持って帰って焼いて食べよう」と言ってびっくりされる。
  • 喧嘩してさわいでいる男子を周りが止めて!と言っているので、「そうか、止めるのか」と思いスコップで頭を殴る。「止めろってみんなが言っていたから一番早い方法で止めました。」と。
  • 家族は愛してくれるがそんな恵子を「どうすれば『治る』のかしらね」といつも心配する。

大学時代

  • 新しくオープンしたコンビニで働き始める。
  • マニュアル通り、教えられたとおりにに動くことで、そこで初めて世界の部品になることができた、今、自分が生まれたと思った。

18年後、36歳

  • 大学を出ても恋愛もせず、ずっと同じコンビニで同じアルバイトをしている。
  • 完璧なマニュアルがあれば『店員』になることができるが、マニュアルの外ではどうすれば普通の人間になれるのか、さっぱりわからないままだった。
 もう一人の登場人物 白羽
  • 婚活が目的でコンビニのアルバイトとして入ってくるが、なまけ癖、やる気なし。客にストーカーまがいのことまでしてすぐに首になる。
  • 30代半ばなのにバイト、一回も恋愛したことがない。そのことで誰にも迷惑をかけていないのに、少数派というだけでみんなが自分の人生に干渉してくることを大いに嘆く。
  • 口癖は「この世界は縄文時代と変わっていない。」「狩りをしない男、子供を産まない女は干渉されムラのためにならない人間は削除される。」
 二人が一緒に住み始める
  • 白羽 恵子は理想とは程遠いが利害が一致するので一緒に住むことにする。干渉してくる世界から自分をかくしてほしいと恵子に要求する。
  • 恵子 男と暮らし始めたことを知った妹や友達、コンビニの店員たちが狂喜するさまを見て「なんだこんな簡単なことだったのか」と知る。

二人が一緒に住むことで、恵子は「普通」になったと周りから認識され、喜ばれる。

ラスト

一回は辞めたコンビニだったが、その後偶然ふと入ったコンビニで、この店に今何が必要か、頭で考えるよりも先に、本能で体が動いてしまう。

そこで「私はコンビニ店員という動物である」と確信し、初めて自分を意味のある生き物だと思うようになる。

感想

前回紹介した「彼女は頭が悪いから」の作者、姫野カオルコさんは、読者に

勘違い、勘違いとは何か」

と、問いかけましたが、

村田紗耶香さんはこの作品で、

普通

のあり方を読者に問いかけています。

それぞれが違っていいのに、「普通」な人は「普通」でない人を異端視し、排除しようとし、「普通」になるように圧力をかける。

その苦しさを知っている恵子と白羽。しかし「普通」の人にはその苦しさがわからない。

「普通」の人だって、どこか「普通」じゃない部分があるのではないでしょうか。

例えば、私は高いところが怖いです。「普通」の人が怖がらないくらいの高さでも怖いです。そこを異端だと見られたり、怖くないよ!と圧力をかけられたら苦しいですよ。

そう考えると恵子たちの苦しさが分かる気がするのです。

 

ラストは私はハッピーエンドだと思いましたね。

恵子が見つけた居心地のよい空間コンビニで、世界の正常な部品となって働けることの幸せは恵子のものです。

よかったね!って言ってあげたい。

この作品はアメリカ、ドイツ、フランス、韓国、台湾など、30の言語に翻訳されているそうです。

日本独特の「普通」であれ、という同調圧力の苦しさみたいなものを、個人主義の進んだアメリカの人などは、どう共感したのでしょうか。

さらさらと読めるので、あまり読書の習慣のない人にもとても読みやすいですよ。
また、読むよりも聴く方が好きな方にはAmazonオーディブル(オーディオブック)があります。
オアシスの大久保佳代子がナレーターです。恵子のキャラクターに合わせたのでしょうか。

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